≪彼女はセンチでロマンチックな女の子でした≫
「空がきれいだね」
 田んぼの畦道を、愛犬のあんこと歩きながら、私は夜空を見上げました。
 冬の空にはオリオン座や、カシオペア座が見えます。
 情緒豊かなあんこも「ワォーン……」とひとなきして、空を見上げたのでしょう。
 私の手に持っていた手綱が、強く引かれました。
 びっくりして、あんこを見ると、溝から頭だけを突き出し、きょとんとしておりました。
 足元不注意にて、転落したようです。


≪彼女は一生懸命な女の子でした1≫
 散歩半ば、砂利敷きの駐車場にて、あんこは鼻をひくつかせながら、地面を調べ始めました。
(おしっこだな……)と気づいた私は、あんこに引かれるまま、駐車場の奥へと入っていきました。
 気に入った場所を発見したあんこは、後ろ足を両側に開き、前足を突っ張り、腕立て伏せのような体勢で、じりじりと前進します。
「あっ、やばいな」と私は思いました。
 案の定、気持ちよくおしっこを済ませたあんこは、勢いよく立ち上がりました。
車の下で。
 頭部を痛打したあんこが、自分を取り戻したのは、それから一時間後のことでした。


≪彼女は一生懸命な女の子でした2≫
 数日後、今度はう○ちをがんばっていたあんこ。
背中を丸めて、4本の足をめいいっぱい伸ばし、気取ったプードルのような体勢で、じりじりと前進をしました。「ふんぬ」と気張り、わなわなと足を震わせてがんばっていました。なかなか今回のう○ちは強情らしく、うまくでてきません。
「あっ、やばいな」と私は思いました。
 案の定、う○ちを済ませてほっとしたあんこは、勢いよく立ち上がりました。
有刺鉄線の下で。
 頭のてっぺんに、ぷつりと鉄線を刺してしまったあんこは、半べそをかいていました。