「犯罪の足跡」

 先日、ミントセミナーの日、私とけ○たろうは二人で大阪城にある森ノ宮駅近くの公園に行ってきました。大小様々な滑り台のある公園です。休日の親子連れで賑わっていました。
けん○ろうは小さな滑り台を何度か滑り、私はそれを見ていました。しばらくして大きな滑り台に行きました。大きな滑り台は上り口が螺旋階段になっており、洟垂れガキどもが雲霞のごとくたかっていました。けんた○う一人ではとても滑れそうになかったので、私も一緒に滑ることにしました。私たち二人は、凄い勢いで上っていくガキどもにもまれながら、地上4メートル程度の頂上に達しました。頂上では一応、それなりに規律のある列ができており、順番を待っていました。
ただ、前に並んでいた白い大き目のTシャツを着た四歳ぐらいのがきんちょが非常にとろくさく、余所見ばかりしていたので、追い抜いてやろうとすると、その子は悲しそうな目で私を見上げました。
「ほら、はよいかな抜かれるで」と私は言いました。
 やっと順番が来て、そのがきんちょが、滑り口に腰を下ろしました。しかしなかなか出発しません。
 恐いのだろうかと思い、「大丈夫やで、早くすべりや〜」とやさしく言うと、「前の子がまだ滑ってるもん」と抜かしました。
 大人な私は「坊ちゃんえらいなぁ」と言いました。
 前を滑っていた女の子が一番下まで行ったので、「もう、行ったで。はよいきや〜」と言いました。
「まだ、降りてへんもん」と抜かしました。
 見ると、先に下りていた子は、降り口のところで遊んでいます。しかし、かなり長い滑り台のため、前のがきんちょが下に着くころには、滑り台を離れているだろうと予測できました。
「もうすぐ降りやるから、滑り降りても大丈夫やで。後ろみんな待ってるやろ」と私は優しくいいました。順番待ちの列がどんどん伸びています。がきんちゃはそれでも行きません。
「はよ行けや〜」少しドスを利かせて言ってみました。
 がきんちゃはなんだかうだうだ抜かしています。後方は長蛇の列です。
 仕方ありませんでした。私は後ろの人間に見えないように、やさしく、背中を押してあげました。あくまでもやさしくです。
 肩越しに抗議の眼差しを残して、がきんちょは、「ひぇ〜」とか何とか抜かしながら、滑り降りていきました。
「けんたろ○! 行くぞ!」け○たろうを股の間に挟み、私は勢いよく滑り降りました。二人で万歳の姿勢で滑ったため、みるみる、前を滑り降りるがきんちょに近づいていきます。
 まずいなと思ったときは、追いついておりました。
 やばいなと思ったときは、三人だんご状態で降り口を飛び出していました。
 がきんちょは、私たち親子の下敷きになっていました。
「痛いよ〜」とわめきながら、半泣きになったがきんちょは、両手を振り上げて「バンバンバンバン」と言いながら、私に突っかかってきました。
 いなしてやりました。
 子供の癖に、ものすごく必死に怒っていました。
 子供はひとしきり感情を爆発させた後、半泣きで走り去っていきました。
 白いTシャツの背中に、くっきりと刻まれた靴跡を見ながら、私はかわいそうなことをしたかなと思いました。