平成17年8月の小話
<実績のないプチ有名人>
出張の帰り、私は阪急梅田駅からJR大阪駅に向かうペデストリアンデッキを歩いていました。
すると向こうから女性が二人。
二人の女性のうちひとりが、私の顔に目を留め、ハッとした様子。
(おーおれもまんざらではないなぁ)私は心の中で叫びました。
「ねぇねぇ」その女性は、横を歩く女性に声をかけました。「あの人、ほら」
(おー! どこぞの芸能人と間違っているのか〜。かーおれって最高!)
と心の中で雄たけびをあげていました。
「ほらほら、みんとの手伝いの人!」
極楽浄土から地獄へとまっさかさまに落ちていきました。
そうです。私はみんとの雑役夫……。
もう少しまともな格好をしてお手伝いしようと思いました。
<はんけつ>
職場へ向かう途中、黄色いタンクトップから浅黒い腕を突き出し、股上の短いジーパンを履いたコギャルが自転車で走っていました。足に原色のペディキュアを塗り、瞬きで風を起こせそうな付けまつげをしています。背中を曲げて、ヘッドホンをしています。
後ろからコギャルを呼ぶ声。
「おーい、お尻が見えてるぞ! おーい!」
苦笑いして私は振り返りました。どこのエロおっさんかと思えば、黒のスーツを纏い、レトロなフレームの自転車に跨り、必死の形相で走ってくるのは紳士でした。
(えらく紳士的なエロおっさんだなぁ)と面食らいました。
「おーい! ユキコ! お尻が見えてるっていってるだろう! 何度言ったらわかるんだ!」
どうも、紳士はコギャルの父親のようでした。
おい父親よ、大声で叫ぶほうがよほど恥ずかしいと思わんか?
<怖がりなかくれんぼ>
いとこのお兄ちゃんたちとかくれんぼをする日。けん○ろうはクスクス笑いながら押入れに隠れます。
しかしすぐに見つかってしまいます。
「けんた○う、かくれんぼだから笑ったら見つかるよ」
「だって、おもちろいもん」
よだれをたらして笑います。
「け○たろう、押入れに隠れるなら扉を閉めないと」
「だって……こわいもん」
<食後にウィンナー>
友人親子と、けん○ろうと私の四人でクワガタ採りに行った日。日が高いうちに樹液ポイントをチェックし、夜の採集に備えファミリーレストランで腹ごしらえをしました。
友人の子供は五歳で、けんた○うは四歳ですから、良い遊び相手を見つけた二人は大はしゃぎ。
四人で夜飯を平らげ、
「ちょっとおしっこいっとくわ」と私。
「ぼくも」とけ○たろう。
「ついてこい」と先に席を立った私が悪かったのでしょうか。
「けんたろ○―」トイレの前で後ろを振り返っても○んたろうの姿は見えず。ただきゃーきゃーとはしゃぐ声だけ聞こえました。
「け○たろうー」もう一度声をかけると、歩幅五センチほどで、足をせかせかと動かし、満面に笑みをたたえ、けん○ろうが走ってきました。
家でトイレに行く時は、まず、
@ リビングでズボンを下げ
A さらにリビングでパンツも下げ
B そしてちっちゃなぞうさんをだしたままトイレへと走る
という習慣になっています。
レストラン内を全開で走るわが息子の姿を見ながら、早急に、いや一日も早くトイレに入ってからズボンを下げるように教育しなければと思いました。
食後のウィンナーは頂けません。
<鯉>
先日、けんた○うと勝尾寺に行きました。雨上がりの週末は人出も少なく、のんびりとした時間を過ごすことができました。
山門の横に大きな池があり、鯉が優雅に泳いでいました。傍らの無人販売所では鯉の餌を売っており、私はそれを買い、けん○ろうはそれを池にばらまきました。
ひとしきり、巨大な鯉と戯れ、私たちは本堂へと向かいました。途中に、もう一つ池がありました。人工の池で、真ん中には阿弥陀如来像が鎮座しています。
池は地面より50センチほど高く、池の淵は黒御影石で丸く加工されていて、溢れ出た水が下の溝に流れ込んでいます。
そこには餌の無人販売所はありませんでした。
け○たろうは残った餌を、そこでも鯉に与えました。腹を減らしているらしく、一抱えもある鯉が大きな口を開け、上になり下になり、えらい騒ぎとなりました。
危ないなとは思っていたのですが、予感は的中しました。けんたろ○が池の手前に餌を落とし、それを取りに来た真っ黒の鯉が、見事、思い余って地面の上へダイブ。
面食らったけんた○うは放心状態。私はドジョウ掬い状態。阿弥陀如来様の見つめる前で殺生はできまいと必死に鯉を池に戻そうと格闘しました。
野生の鯉がいかに大暴れするか、いかにぬるぬるの体をしているか、思い知らされました。
ジーパンをどろどろにしながら、どうにか鯉を池に戻した時、周りには幾人かのギャラリーがいました。
放心状態から戻ったけんた○うは、「パパ、こいをいけからだしたらあかんやん」とわけのわからんことを言いました。